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 山形市東原町の定食の名店「あすなろ食堂」が、2020年4月28日をもって閉店しました。「年齢には勝てず……突然ですが……」という告知が店に貼り出されたのは閉店日の間際で、シャイな店主と女将らしい唐突な幕引きでした。
 こちらも定食の名店だった「国味」が、一足早い2018年11月に“定年退職”を理由に店を閉じており、これで山形市内から定食屋の王道を行く東西正横綱の2店舗が失われた形になってしまいました。

 もともと男子校の山形南高校に面した大通りにあり、腹を空かせた高校生や近くに下宿する山形大学生などの胃袋を満たしていた「あすなろ食堂」でしたが、いつしか現在の場所に移転し、その後も定食愛好者が納得する質と量を兼ね備えた定食をずっと提供し続けてきました。
 私の場合、あれは30代だったか、あすなろ定食が680円の頃から新しい店のほうに通い始めました。自分はいったいここで何食食べたのだろう。

 通いたての頃の女将はどちらかというと愛想に乏しく、まだ若くて勝気そうなところがあったためか、忙しいとつっけんどんになり皿の置き方がラフになるという、初心者にとっては多少の緊張を強いられるような店でした。
 しかし店主がつくる料理の味と量にはまったく文句の付け所がなく、加えて調理から盛り付け、配膳に至る手際は極めて素早く一種芸術品と言っていいぐらいの夫婦の阿吽の呼吸をカウンター越しに見るのが徐々に楽しみになっていったのでした。
 また、何度か通っているうちに、そういう客との接し方が二人のやり方なのだとわかり、いつしか不思議なアイコンタクトによって二人と心を通わせることもできるようになったのでした。

 二人には、食堂で儲けようという様子はなく、日々健康を維持したまま長く店を続けていきたいと考えているように見えました。そしていつも、自信のある料理を出来立てのうちに、客に腹いっぱい食べさせたいという職人の心意気で働いているように感じました。
 地元のテレビ番組から県内の定食屋のトップクラスとして紹介したいとのオファーがあったときも、さばけないほどの客が殺到することを嫌ったのか、登場を拒否したこともありました。

 この4月の中旬、閉店することを知らずに、キャベツと豚肉の春雨炒め、キュウリとイカのサラダ、揚げ出し豆腐のあすなろ定食をおいしくいただいたのが、この店での最後の食事となってしまいました。残念でなりません。
 こうなってしまった以上、ただただお二人の末永いご健勝を祈らずにはいられません。

asunaro last 202005
(在りし日の「あすなろ食堂」)

 さて、自分のような定食愛好者はこれからどんな店に行けばいいというのでしょうか。しばらくは本気で悩むことになりそうです。

 「あすなろ食堂」の愛好者は多かったことと思います。このブログには「あすなろ食堂」で食べた36食を写真と記事で載せていますので、左上の「検索フォーム」に「あすなろ食堂」と入力してリストアップしてみてください。
 心より、長い間ごちそうさまでした。本当にありがとう。

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