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tenka 201702

 鶴岡市本町の「天花食堂」を初訪問。
 商店街の一角にある小さくて古い町食堂。ドアを開けると、客のいない店内でテレビを見ていた老夫婦が「いらっしゃい」と迎えてくれました。
 第一印象は「こりゃあ昭和だなあ!」。昭和で時間が止まっている感じです。古い椅子とテーブル、テレビが大きめの音で点いており、暖房は石油ストーブ、厨房の上一面にメニュー札がずらり。
 きちんと化粧した老女が淹れてくれた茶が濃くておいしい。

 短冊の中からカツ丼850円をチョイス。
 ほどなくして運ばれてきたカツ丼は、まさに大衆食堂のそれ。ルックスがいいではないか。

 カツが丼の表面全体を覆い、その4/5は切った形そのまま中央に、また、カツの端っこの半円形の部分、つまりは脂の乗ったおいしい部分は空いたスペースに配されています。ごはんが見えなくなっている――というのが「大衆」である客を喜ばせる仕掛けになっているわけです。
 肉自体は厚いものではありませんが、今しがた厨房で揚げたものをすぐに使っているので、おいしい。
 どんつゆが独特。多分使っている醤油が違うのだろうと思いますが、濃い口のもののよう。しっかりした醤油味の後ろにうっすらとした砂糖の甘さが漂い、これはなかなかだぞ。
 こうして食べていると、カツ丼とは肉自体を味わうのではなく、肉、衣、卵、タマネギ、どんつゆ、ごはんの混然一体性を味わうものだという思いが強くなります。豚カツが食べたいのならとんかつ定食を食べればいいわけで、カツ丼は店ごとに異なる構成要素の機微に喜びを感じながら豪快にかっ込むものなのだ。

 豆腐とワカメの味噌汁も、ダシの取り方が独特なのか、この店ならではの味わい。ワカメが緑色なのもポイントが高い。漬物もたっぷりで、紅色のものは生姜です。

 納得のカツ丼。
 いい食堂で、小さいながらこれまで続いてきたことの実力がうかがえました。
 しかしどうなのだろう、この店も二人の代限りで終わってしまうのだろうか。この昭和チックで静かなたたずまいの店がいずれ失われてしまうのだとしたら、いかにも残念なことだ。

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